駒場東大前①
その日は、渋谷からの乗り換えで、渋谷からの乗り換えは迷路のようにぐるぐると歩かされるのでいつも腹を立てていて、その日ももれなく腹を立てていた。渋谷から、京王井の頭線で、駒場東大前駅まで向かった。
僕みたいな人間が駒場東大前駅に行くのは、駅名の場所に用があるのではなく、こまばアゴラ劇場に用があるからだ。演劇人にはすぐに通じるだろうが、そうでない人にとっては馴染みがないかもしれない。
その日の駒場東大前駅は、人でごった返していた。駅名の大学で、学園祭が行われていたからだ。
予定時間より2時間近く余裕があり、近くのカフェで読書でもしようと企てていたのだが、そのうちの少しをこちらに割いてもいいかもしれないと思い、ふらりと脚を運んだ。この間、知人と学園祭の話をしたのも背中を押してくれた理由の一つだ。
僕は基本的に大学の学園祭というものは嫌いだ。理由は、大して美味くもないフランクフルトや焼きそばなどを、相手のことを敬わない態度で売ってくるその感じがいけ好かないと思うからだ。もちろん、中にはしっかりとした経営理念を持って売っているお店もあるだろうが、大概がいけ好かない。でも、売っている人からすれば、それは楽しいイベントであり、僕も売り側だったらきっと楽しいんだろうなと思うけど、消費者の側になったらやっぱりいけ好かないと思ってしまう自分がいる。
いや、でも、行ったこともない知り合いもいない大学の学園祭に1人で行ったって、あんまり楽しめるもんでもないだろうとは思うのだけど(笑)
賑やかな大学生たちを横目に屋台道の人混みを通り抜けた。イチョウの道がとても綺麗で、上ばかり見ていた。
キャンパス内に入り、展示物のコーナーに行く。この間、知人が学園祭で発表するまでの経緯を聞いて、大学生の展示物に興味を持ったからだ。
そこでは、襖の張り替えの実演やら、カワウソの写真の展示物をやっていた。こっちの方が、外の空気より好きだ。襖の張り替えは声が小さく全く聞こえなかったが、カワウソの写真の展示物もカワウソのアップの写真ばかりでもう少しカワウソの生態を知りたかったこともあったが、久しぶりの大学生の集団という空気に触れ、懐かしい気持ちになった。
今まで自分の大学の学園祭の時は、自身の演劇の公演がメインで、あまり他の発表を見に行くことができなかった。行ったとしても後輩のダンスを見ることや、音楽学科のジャズを聴きに行くことが多く、展示物を見る機会は少なかった。
でも、高校の文化祭やら、他大学の学園祭やらには、ちょくちょく行くことがあった。それはお芝居を観に行くことがメインで行く場合が多かった。
外に出ると、外国の楽器を使った路上パフォーマンスをしている集団に出会う。
そのパフォーマンスは、他の人からするとダサいとかわけわかんないとか思う人も中にはいるかもしれないが、僕にはとっても魅力的に映った。思わず素敵で、笑ってしまった。最後、拍手してその場を去る。
当たり前だけど、どの大学生もその学園祭を成功させるために、一人一人準備し、必死なのだ。その頑張りをひしひしと感じることができるのは、学園祭の魅力なのかもしれない。
そんなことを思いながら、僕は大学を後にした。